「劇団どくんご」東京公演 ・・・私は毎晩客席にいる


また東京にいる。

ついこないだ、“ニセ選挙運動”で東京都知事選に介入し、大いに暴れたばかりである。いったん本拠地の福岡に戻り、全国から9名の学生を集めて「教養強化合宿」など開催していたが、東京を離れて車で福岡へ向けて発ったのが、ちょうど1ヶ月前だ。

もっとも急遽やることにした“ニセ選挙運動”と違って、今回の東京滞在はずーっと前から決まっていたことだ。

「劇団どくんご」東京公演である。

aiyori_flyer全国約40ヶ所を旅公演しているテント劇団だが、福岡公演の現地スタッフをやっている他、熊本や大分などでの公演地確保にも動き、単に観るのも、毎年九州の全公演地と、大学構内が会場となっている場合と、東京公演にはほぼすべて駆けつけ、年によっては余力で全国各地の公演地に時折出没している。今年はもう、出水(鹿児島)、宮崎2日間、鹿児島3日間、小倉(福岡県北九州市)3日間、群馬2日間、埼玉の越谷と飯能に1日ずつ、千葉県我孫子に3日間と、計16回も観ている。毎年だいたい20回ぐらい観るんだが、今年は30回をゆうに超えそうだ。東京以外の関東各地に出没しすぎたせいだが、我ながらちょっと観すぎである。

「どくんご」は83年の結成だという。もともとは埼玉大学の演劇部だったらしい。

80年代には大学という場所は(私は大学には行かなかったので、うっすらと伝え聞くぐらいだが)明らかに学生ではないような怪しい人たちがウロウロしているのが普通で、「どくんご」の初期メンバーたちも80年代半ばには卒業したり中退したりして、そういう怪しい人たちとして埼玉大を拠点に活動を続けていたようだ。

初めて旅公演をやったのは88年とのことだ。当時は大所帯で20人ぐらいいた劇団員を3チームに分け、それぞれが簡易なセットで上演できる手軽な芝居を作り、全国に散って、知り合いのツテを頼ったり、当時一瞬盛り上がっていた反原発の活動家を訪ねたり、あるいはゲリラ的に路上公演して寄ってきた通行人を捕まえたり、「近々テントを持参する本格的な旅公演をやりたいんで、現地スタッフとして協力してくれないか」と相談を持ちかける“プレ旅”をまずやって、その88年のうちに実際にテントでの全国ツアーを敢行したらしい。

そういう草創期のことは、私はよく知らない。初期は勢いというか若気の至りというか、楽観的に突っ走っていたようだ。やがてそりゃあ将来を不安に感じ始める人たちも出て、90年代半ばぐらいには初期からのメンバーが5、6人残って、3、4年に1回の旅公演、というスタイルが定着していたと聞いている。私が初めて「どくんご」を観たのは01年のことで、その時にはたしかにそうなっていた。メンバーがそれぞれ3年なら3年、バイトなどでお金を貯めて、一斉に仕事を辞め、貯めたお金を出し合って、半年間稽古をして、半年間旅をする、それで4年サイクルなのだという話だった。

が、なにしろ今年で結成33年である。33年前に学生だった人たちなのだ。01年、05年と私は「どくんご」に熱狂し、09年を待ちわびたが、当人たちは岐路にさしかかっていたらしい。40代も半ばになり始めて、いったん仕事を辞めると、ツアーが終わっても次の仕事がなかなか見つからないというキビシー現実に直面していたのだ。

もうやめちゃうか、という話もあったそうだ。しかしやめるのはいつでもできる、試しにコレだけで回していけないか、1度試してみて、それでもダメだったらやめればいいじゃないか、と無茶な結論を出してしまった。

そうなると、首都圏でそれぞれアパートなど借りて、ツアーに出ている間も家賃を払い続けなきゃならないのは負担が大きすぎる。いっそ全員でどこか田舎に引っ越して、集団生活しながら稽古する、あわよくばツアーに出ている間は家賃を払わなくてもいいような好都合な物件はないものか、とそれまで何度も全国ツアーをやってきたのだから全国各地に友人知人は多く、相談を持ちかけて探してみたら、鹿児島県の山奥に“牧場跡地”が見つかった。広大な敷地(テントを建てての稽古もやり放題だ)にポツンと平屋の家が建っていて、どういう話だったか夏の間は大家が何かに使っているらしく、ちょうどツアー中は家賃を払わなくていいそうだ。

それで「どくんご」の面々は08年に鹿児島県出水市の高原に集団移住してきた。当時は九州出身の劇団員が1人もおらず、さぞ暖かいに違いないと(冬の九州はそれまでのツアーでも経験していないわけだ)大いに期待してきたのに、来てみるとこの標高8百メートルの高原地帯は、鹿児島なのに毎年雪かきが必要な九州有数の豪雪地帯で、こんなはずではなかったと時々愚痴を云っている。

以来(昨年だけツアーを休止したが)、冬の間に“山岳ベース”で新しい芝居を作り、ゴールデンウィークぐらいになると山を下りてきて、まずは近場の出水市もしくは隣の熊本県水俣市で初演して、5月いっぱい九州数ヶ所を回り、徐々に北上を開始、暑い盛りの時期に北海道で5、6ヶ所やって、お盆を過ぎたあたりで青森に渡り、徐々に南下を開始、11月にまた九州数ヶ所を回って、鹿児島市で(今年は熊本だが)約7ヶ月間のツアー千秋楽を迎え、また出水の山奥に戻って翌年の芝居を作る、というサイクルで現在までやってきた。移住当初とはメンバーもだいぶ入れ替わり、今年は20代の劇団員も3人いる。

経済的にはまだなかなかキビシーらしいが、こんな無茶をやる人たちの作るものが面白くないわけがなく、13年、14年あたりからようやく各地でテントが満員になり始めた(まったく口コミ便りなので、むしろ地方よりも東京でずっと動員に苦戦していた。地方では面白ければ口コミで年々集客が増えるが、東京では昨年の評判なんかとうに忘れられてしまっている。まあその苦境もようやく脱した)。

今回は内容的なことは書かない。まあとにかく来ればよい。

一応最低限のことだけ書くと、「ストーリー」とかはない。稽古期間中に、役者(今回は6人)がそれぞれ短い独り芝居や“芸”を他全員の前でまずは披露してみせて、「それ採用!」となったものを並べたものを原形で、それを練り上げて完成系に持っていくという作り方をしているから、「ストーリー」とかあるわけないのである。たまに、頑張って「ストーリー」を追って迷宮にハマり込んでしまい、「意味わかんない!」と不機嫌になって帰っていく可哀想な人がいるから、それだけ書いておく。

9月1日(木)から11日(日)まで、吉祥寺の井の頭公園(ジブリ美術館の裏手あたり)、毎晩19時開場・19時半開演だ。ただし4日(日)と8日(木)は休演日なので注意。料金その他詳細は劇団のサイトを見るべし。予約はしといた方がいいと思うが、それも劇団サイトの「公演スケジュール」ページから。

もちろん私は毎晩客席にいる。今回の東京では「外山恒一を囲んで飲む会」とかはとくに開催しないし、私と話したいという人も「どくんご」の芝居を観に来て、終演後に声をかけてくればよかろう。

いやー、福岡でうっかりしていて、気がついたらもう明日が“前夜祭”(8月31日、「どくんご」のテントを使ってのライブ・イベント)じゃん、と慌てて高速を飛ばして東京入りし、意外と余裕をもって到着できたのでネットカフェに入ってコレを書いているという、ボーッとしてるのが悪いんだが目まぐるしいったらない。