左翼的でも右翼的でもないが形式面では常に極左冒険主義、「劇団どくんご」のツアーが今年も始まった


 

「劇団どくんご」の今年のツアーが始まった。

コレを書いている5月9日現在、すでに鹿児島県出水市公演、宮崎県えびの市公演が終了し、次は福岡県八女市公演、そして大分県豊後高田市公演と続く。その後さらに本州に渡り、夏の北海道6ヶ所公演で折り返して、また九州までジワジワ南下してくるのは例年のとおりである。

「どくんご」については、これまでにもさんざん書いてきた。全国ツアーが、88年以来の“3、4年おき”から“毎年”と変更された初年度である2009年の演目「ただちに犬 Deluxe」について詳細に書いた長い文章もあるし、このweb版『人民の敵』でも、昨年9月1日付の記事や、10月23日付の記事などがある。とくに09年以来、私がこれほど口をすっぱくして「どくんご」を観ろと云い続けてきたにも関わらず、1度観て自分には合わないとそれっきりというならともかく、1度も観てすらいないような奴はもう話にならんわけで、そのまま無駄に人生を終わればいいんじゃないかと思う。まあ、最近になって初めて私の存在を知ったという者もあろうから、そういう人は、私が他の何よりイチオシでオススメし続けている「劇団どくんご」を、とにかくまず1度でいいから観てみなさい。10月下旬まで、全国各地30数ヶ所で公演がある。もし近くで公演がおこなわれない場合でも、隣県ぐらいまで出張って観る価値はある。

そんなわけで今回は改めて「どくんご」についてイチから説明はしない。この文章で初めて「どくんご」の名前を知る人は、上記リンク先などを読めばいい。

 

 

 

今年の演目は「愛より速く」である。「ん? 昨年もそうじゃなかった?」と当然にも昨年観ている正しい諸君は思うだろう。そう、昨年と同じである。

が、よく見ると「愛より速く 2号」とサブタイトルのようなものが付いている。さらによく見ると、7月22日の北海道・鶴居公演までは「愛より速く 2号」、3日おいて7月25日の同・鶴居公演以降は「愛より速く FINAL」となっている。それはつまり昨年と内容は違うということなのか? そして今年の前半と後半でも内容が違うということなのか? 昨年の「愛より速く」を観た人は、やっぱり今年も観たほうがいいのか?

今回はそこらへんについて、ネタバレしない程度に書こう。

まず、昨年と今年とでは役者が何人か入れ替わっている。昨年の「愛より速く」で、毛布を床に叩きつけたりしていた女優・サドゥ瑞穂、“綱渡り(のよーなこと)”をやっていた女優・イク、そして“ビルのようなものとビルのようなものの間に挟まれ”たり、バス停だったり、膝のところにある“引き出し”に指を入れて“なんとなくタムロさせ”たりしていた男優・ちゃあくんの3人は、今年のツアーには参加していない。その代わりというか、2013年以来「どくんご」の熱狂的ファンとなり、昨年はなぜか私の都知事選・ニセ選挙運動に“第2のニセ候補”として参加していたりしたダンサー・“Lee”こと村上理恵が“まっさらの新人”として参加し、そして劇団創立メンバーで、私が初めて「どくんご」を観た2001年までの全演目に出演し、2011年の「A Vital Sign ただちに犬」で10年ぶりに復活した男優・空葉景朗が、また6年ぶりに出演している。

私は昨年の段階で劇団側から、今後は同じ演目を2年間やり続ける形にする、と聞いていたのだが、だから5月3日の鹿児島県出水市公演で今回の「愛より速く 2号」を初めて観る前の時点では、おおよそ以下のように想像していた。

「どくんご」の芝居は、20本ぐらいのそれぞれ独立した短い演目が目まぐるしく、とくに互いにつながりのない形で次々と上演されるというものである。バンド演奏やダンスのシーン以外の、まあ狭義の“芝居”のシーンは、2、3の例外を除き、大半は個々の役者が自分で作ってきた“独り芝居”(をベースとしたもの)で、あとさらに、全員が出てきてほぼ同量のセリフを喋る完全にアドリブのシーンがいくつかある。したがって、少なくとも今年いない3人の役者のソロのシーンはなくなるはずだし、そこは今年新たに参加する2人の役者のソロのシーンになるだろう。全員のアドリブのシーンも、もちろん役者が入れ替わっているぶん変化があるだろう。他はきっと、昨年と同じなんだろう。まあもしかすると、昨年とは違うことをやりたいってことで、1つ2つは、昨年も出た役者が昨年とは違うソロの演目をやるぐらいのことはあるかもしれない。

実際に観て、驚いた。

昨年とほとんど違う芝居じゃん!

もちろん昨年と同じシーンも少しはある。しかし文字どおり“少しは”なのである。私もまだ2回しか観てないんで、あくまで印象だが、3分の2以上は昨年と違う演目だし、昨年あったシーンにも大幅なアレンジが加えられている。えーいこれは書いちゃうが、バンド演奏のシーンも、オープニングの曲は昨年と一緒だがエンディングの曲は違うし、なんとダンス・シーンも違う。

そんなわけだから昨年「愛より速く」を観た人で、今年も同じ演目なんだったら観にいかなくてもいいや、と早合点していた人はそれは早合点というものである。今年も観たほうがいい。

 

 

で、ツアー後半の「愛より速く FANAL」についてだが、これはもちろん私もまだ観ていないわけで、何とも云えない。しかし1つ大幅に変わることがはっきりしているのは、やはり役者が1人入れ替わるということである。「愛より速く 2号」に出演している創立メンバー・空葉景朗は、「愛より速く FANAL」には出演しない。代わりに、やはり創立メンバーで、09年の「ただちに犬 Deluxe」まで全作品に出演していた男優・時折旬が、8年ぶりに復活する。したがって少なくともツアー前半での空葉景朗の完全なソロ・シーンはなくなり、時折旬のそれが新たに加わるはずである。他のシーンはさすがに大幅な変更はなかろうが、同じく創立メンバーとはいえ、この2人の芸風というか芝居のテイストは相当異なるので、仮に同じ演目をやったとしてもかなり違う印象になるに違いない。

私は常々、「どくんご」の芝居は同じ演目でもなるべく2回は観たほうがいい、とも云っている。舞台上で1度にあまりにも多くのことが起きていて、1回観ただけでは気づかない部分もたくさんあるはずだからである(私なんか毎年、10回目ぐらいにやっと気づく“小ネタ”もあったりする)。しかし今年はそもそも、少なくともツアー前半と後半とを1回ずつは観ておかないと、単純に“損”をすると思う。上記のツアー日程表とニラミ合わせて、今からスケジュールを練っておくよろし。

 

 

「どくんご」が今年からというか昨年からというか、“2年サイクル”なんて妙な試みに走ったのにはワケがある。
ようやく各地で浸透してきて、地元では公演のない場所からはるばる観にきてくれた人が、「ぜひウチでもやってください」というケースも増え、しかし日程的に、“約7ヶ月間・全約40ヶ所のツアー”という線は動かせないのである。そしてその“約40ヶ所”の9割方は、すでに観客も定着していて、ツアーのコースから外せない。

そこで考えたのが、じゃあ2年間で70~80ヶ所を回ることにしよう、ということであるらしい。例えば今年は福岡公演や鹿児島公演があるが、来年はない。逆に今年は北九州公演や熊本公演はないが、来年はある。そして、昨年まではやっていたが今年はやらないその20~30ヶ所ぶんに、新規の公演地が充てられることになる。

まあそれはいいんだが、やはりこういう面白い人たちは、いざやるとなると極端なのである。ツアー序盤の九州4ヶ所のうち、劇団の拠点がある鹿児島県出水市での公演は、これはたぶん今後も“1年おき”ではなく毎年やるんだろう。しかしあと3ヶ所はすべて新規の公演地、しかもせめて長崎市とか佐賀市とか、まだ「どくんご」が公演してない九州内のそこそこメジャーな都市はあるというのに、なぜかよりによって宮崎県えびの市、福岡県八女市、大分県豊後高田市などという人外魔……ちょっと辺鄙なところばかりなのだ。どうなることかと心配していた5月7日・えびの公演は、フタを開けてみると“ほぼ満席”で、地元の新しいファンも獲得できたようだしホッとしたところだが、八女、豊後高田が終わって本州に渡っても、次は山口県岩国市という、これまた新規のマニアック地方都市での公演が控えているのである。

芝居の内容はとくに左翼的でも右翼的でもないが形式面では常に極左冒険主義としか云いようのない「劇団どくんご」のツアーが、とにかくこうして今年も始まった。

 

劇団どくんご