「トランプ的なものに引き寄せられる人たちに対して、はたして文化左翼的なものというか、批評的なものがどのようにして付き合うか」という北田暁大の発言は重要な問題提起(外山恒一):『現代ニッポン論壇事情 社会批評の30年史』を読む(5)


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前回からつづく

 


(「第三章 トランプが日本のリベラルに突きつけるもの」黙読タイム)


 

外山 では何かあればどうぞ。……比較的マトモなことが云われてる気はする。事前にスガさんからかなり悪口を聞かされてたんで、東浩紀と違ってもともと何の反感もないどころか逆に多少は好印象を抱いている北田暁大や、ぼくの本まで買って読んでくれたらしい栗原裕一郎の悪口を云わなきゃいけなくなるのかと不安に脅えてたのに(笑)。

A女史 私はスガさんが反発する気持ちも分かるけどなあ。だって新自由主義にすべてが飲み込まれてしまうような話じゃないですか。新自由主義を批判してはいるんだけど、結局この人たち自身の議論もそっちに飲み込まれてると思う。

外山 スガさんはたぶん、この鼎談でも盛んに槍玉に挙げられてる、“経済成長なんかもう無理なんだ、資本主義そのものがもう限界なんだ”というスタンスで、この3人の議論も要は“そんなこと云わずに資本主義を延命させましょうよ”って話だから批判的にならざるをえないんでしょうね。

A女史 新自由主義そのものがもう資本主義を内部から壊すようなものよね? 新自由主義のもとで私たちは苦しめられてるんだけど、何をやっても新自由主義に絡めとられるだけで勝つことはできんし、じゃあこのまま新自由主義で行けば資本主義は内側から崩壊していくだろうし、つまり“資本主義はもう終わりだ”ってことですよ(笑)。

外山 ぼくも欧米の左翼がじゃあどうしようと云ってるのかよく分かってないんだけど、少なくとも北田座談会の3人は、日本のリベラルも欧米の左翼の路線を採用すべきだと云ってて、かつトランプ的な方向には批判的であるようだ。

藤村 2つのものが槍玉に挙げられてる。1つは、結局は新自由主義に回収されることになりそうなタイプの反トランプ派や反安倍派。例えばナイキとかアップルとか、グローバリズムに親和的な企業が反トランプ側に回ってるわけで、反トランプ派は、そんなつもりはなくてもそっち側に回収されてしまいかねない。もう1つ槍玉に挙げられてるのはオールド左翼的な、TPPに反対しているような人たちですね。いまどき国境を閉ざすようなことはできないんだから、そんな主張をする人たちは時代遅れである、と。じゃあそれら2つの方向に反対する彼らはどういう立場になるかといえば、グローバリズムでかつ反緊縮ってことでしょうから、Aさんの云うとおり、要するにグローバリズムじゃん、という感じはする。

よしこ画伯(遅れて到着した、やはり東京からのこの日たまたまの客人。コレとか書いている人) 最後のほうの“保護主義批判”のところだけ、なんかそれまでの議論とミスマッチですよね。

外山 何ページあたりですか?

画伯 200ページぐらいから……。

外山 ちょうど200ページに、「日本の左翼が反グローバリズムに走るというのが、逆にトランプ的なものと共鳴してしまっている」という北田による指摘もあります。

画伯 つまり保護主義的なものを批判してるわけでしょ? それまでの議論からすれば、この人たち自身もトランプ寄りになってもいいはずなのにさ。

外山 あるいはこの章の一番最初の136ページに、やっぱり北田発言で、「トランプ的なものに引き寄せられる人たちに対して、はたして文化左翼的なものというか、批評的なものがどのようにして付き合うかというのは、大変重要な課題になっているように思います」というのがあって、非常に重要な問題提起をしてると思うんですが、結局はこの議論も「トランプ的なものに引き寄せられる人たち」と切り結べるところまでは行ってない。何やかんや云いつつ、“反トランプ”を前提に考えることから抜けきれてないもん。

最後のほうの214ページで、長渕剛に思い入れて本(『長渕剛論 歌え、歌い殺される明日まで』毎日新聞出版・16年)まで書いちゃった元“ロスジェネ論客”の杉田俊介が茶化されたりしてますけど、こういうふうに簡単に切って捨てちゃいけないよね。すでに超有名な人の範囲で云えば、“日本のトランプ”になりうる潜在的可能性を一番持ってるのは、長渕なんだからさ(笑)。その“論”の正否は措いて、少なくとも、ここで茶化されてる杉田俊介のほうが、「トランプ的なものに引き寄せられる人たち」に近いところで試行錯誤してるってことだし、あるいはやっぱり熱烈な長渕ファンで、どうもファクラブ会報の編集まで引き受けてるらしい“メンヘラ・アナキスト”の栗原康もそうでしょう。もちろんぼく自身がそういうのに乗っかるかどうかはまた別なんだが(笑)。

藤村 たしかに最後のほうの“保護主義批判”は唐突な印象がある。

画伯 安倍さんについては、この人たちは、その経済政策を政治的なスタンスへの批判とは切り離して考えるべきだって繰り返し云ってて、そこは私も賛成だけど、トランプの話になると、この人たちも“トランプのやることは何でも反対”みたいになっちゃってるよ。それまでの議論から当然、トランプの女性蔑視的な発言がどうこうとかって話と、トランプの保護主義的な経済政策の話は分けて考えるべきで、それができないから“文化左翼”はバカなんだ、という話になるのかと思いきや、“トランプ全否定”みたいな結論になってるから、“あれれ?”って(笑)。

外山 “トランプ政治を許さない!”に収斂しちゃってる、と。

画伯 とにかくトランプは嫌いなんだということは分かった(笑)。

外山 もちろんこの人たちも基本的には“アベ政治”にも批判的ではあるはずですけどね。ただ、それでも経済政策に対する評価は分けて考えようよ、という話をしてたはずだよな、たしかに。

……203ページの栗原発言で、かなり前から「左派リベラルの論理では、グローバリズムというのは帝国による周辺国からの搾取にほかならないから、辺境国が耐えられなくなって破綻するというストーリーが描かれてき」たのに、「でもトランプ現象やブレグジットで明らかになったのは、グローバリズムに耐えられなくなったのは、途上国ではなくて、先進国の中間層だったということですね」という箇所があって、まったくそのとおりだと思います。でもこの人たちはこの本でずっと、その「中間層」を救おうって話をしてたはずだ。

藤村 もちろんそこは、リカードの比較生産費説とかを引き合いに出して、“新自由主義のほうが経済性が高い”とかって話で、移民を制限してしまうとむしろ生産性は下がるんだ、“移民を入れるな、EUなんか離脱しろ”なんてことをやってるとイギリスの労働者の生活はもっと悲惨なことになるんだ、というふうに話の整合性は維持しようとしてはいます。

外山 146ページあたりで、“左派リベラル論壇では「経済」の話をするだけで「新自由主義者」呼ばわりされてしまう”と憤り合ってますけど(笑)、彼らは実際どこが新自由主義とは違うのかな? “トランプでいいじゃん”という結論になってるんなら、たしかに新自由主義者ではなさそうだな、と思うけど、“トランプの保護主義とかイギリスのブレグジットとかはイカン”って結論なんだもんね。

藤村 そもそもリカードの「比較優位」の議論は、国境を越えた商品とかの移動はあるが、労働力の移動はない前提でしょ(註.この読解については後で事実誤認が修正されるが、しばらくこのまま議論が進むので放置)。

外山 ぼくは経済の話は全然知らないんで、そこらへんの話もよく分かってません。どういう議論なんですか?

藤村 保護貿易って、自国の産業の弱い部分を守るためにやるものだよね。例えば日本の場合ならコメとかさ。コメだけでなく農業全般だな。でもそういう保護政策はやらないほうがいいというのがリカードで、日本の農業がダメなんだったら、もう農業生産なんかやめて他の工業とかに特化しろ、と。逆にどっかの途上国は農業に特化すればいい。その上で“自由貿易”をやったほうが、どっちの側にとっても利益になるんだ、っていうね。

画伯 だけどそういうリカードが云ったようなことを素朴にそのまんま云ってるような人たちって、今はいないじゃないですか。

藤村 うん、資本の移動が容易におこなわれるようになって、さらに労働力の移動まで始まったら、リカードの云ってたことはそのままでは成り立たなくなる。

外山 資本や労働力まで自由に移動できる状況で自由貿易をやると「先進国の中間層」が一番悲惨なことになる、という今まさに起きてるような展開になるんですね? この本の前半ではずっと、“ロスジェネ世代”っていうまさに“「先進国の中間層」の悲惨”についての議論が一過性のものとして今や忘れられてしまっていると嘆き合ってたはずなのに、なんで結論部分ではこうなっちゃってるの?

画伯 多くのリベラル派の経済オンチぶりに対する彼らの批判はもっともなんだけど、彼らも“比較優位”とかを云いすぎだよ。彼らの批判対象よりは彼らのほうがマシなんだろうけど、彼らが云うような素朴な“比較優位”の話だってもう成り立たないんだ。

外山 左派・リベラル派の二枚舌への批判は、“そうだそうだ!”ってかなり賛同できるんだけどね。192ページの、“反トランプ・デモと「私はシャルリー」デモなんか似たようなもんじゃないか”っていう栗原発言とか、まったくそのとおり(笑)。

藤村 うん、いいこと云ってる。

外山 192ページから193ページにかけては、いい発言が多い。北田は「安保法制に反対ではあったし、デモも何度も行ったりしたけど、しかし、法案は通るだろうと思っていたし、選挙だって負けるだろうと思ってい」て、つまり醒めてたのに、案の定、法案も通って選挙も負けると、周りの「左派の人たちみんなが、びっくりするぐらいがっかりしていた」、「左派はちょっと状況が見えなすぎなんじゃないか」って(笑)。それに続く、「アパホテルの人たちが真実を見ているとは思わないけど、ただアパホテル的なものに惹かれていく普通の人がいっぱいいるということは、普通に下町の喫茶店に行くとか、あるいは自分の親とかを見ているとわかるわけです」っていう発言もいいよね。

画伯 「足立区に住んでみろ」発言(209ページ・栗原)も素晴らしい(笑)。

外山 ここらへんの話はほんとにそう。我々も九州に住んでるから、3・11以降も何ら盛り上がってないことぐらい当然の認識だもん。209ページの栗原発言にある、世間というものがちっとも見えてないリベラル派への「セカイ系」呼ばわりも良かった(笑)。

……で、201ページの栗原発言にあるとおり、「トランプ勝利で、反グローバリズム的なリベラルは非常にややこしい立場になった」はずなんだけど、そのことを自覚できないぐらいリベラル派はバカになってるのが問題なんだよな。202ページの同じく栗原発言、「資本や物のグローバル化に反対するリベラルも、移民だけはOKなんですよね」というイヤミもまったくそのとおり。

藤村 あ、その発言の中に、「比較優位が移民にも働くというロジック」を提出した経済学者がいる(ベンジャミン・パウエル『移民の経済学』東洋経済新報社・16年)という話が出てますね。なるほど。すいません、読み飛ばしてました。……でも、ここらへんを境に新自由主義的な話になっていく。例えば205ページで、北田さんが「日本の左派に広がっている保守主義というか生活保守は、炭鉱町を潰すのはダメだと言う」という話を出して、栗原さんが「産業構造の変化による淘汰を新自由主義と言ってしまっては……」とコメントしてますが、「炭鉱町」(筑豊)からはるばるお越しのAさんは、どう思われますか?(笑)

A女史 私たちの地域はずいぶん昔から、アメリカの「ラストベルト」みたいな目に遭い続けてきたわけで、今さらもう何とも思いません(笑)。

藤村 彼らが云うように、どうすれば経済成長が可能なのかという議論を脇に置いてしまう日本の左派インテリたちには問題がある、という指摘はその通りだと思います。でも、180ページあたりで宮台真司まで“脱経済成長派”に括ってしまっているけど、実は宮台も経済成長について語っていないわけではないんだよ。宮台は、高付加価値のものへと日本の産業構造の中心をシフトさせることで経済成長を実現しようってことは云ってた。そのシフトを邪魔してるのが“既得権益層”だ、っていう。“原発”が典型的だけど、従来の重厚長大型の、経団連会長とかを代々やってきたようなタイプの財界人とか、プラスその周りにくっついてる金融機関とか、そういうところから“IT”を含めた技術・知識集約型の産業に中心をシフトさせるべきだ、と宮台は云ってるはずです。まあ、日本はとっくに出遅れてるし、今さらそういう方向も難しいでしょうけどね。

外山 206ページで北田暁大が、「新自由主義とリフレ派と新古典派は、全部同じような意味になっている」と嘆いていて、つまりその3つは本来まったく別のもので、彼ら自身は「リフレ派」なんだということでしょう。で、彼らリフレ派は新自由主義者とどう違うかというと、おそらく、147ページに“レッセフェール(自由放任主義)批判”があるように、新自由主義の“市場原理にすべて任せろ”ではダメで、市場に介入して資本主義を維持せよ、ってことかな。つまり彼らは“反資本主義”ではなくて、資本主義を維持するためにも新自由主義的な“自由放任”ではイカンのだ、と。かつそういう立場が他の先進諸国の左派のスタンダードなんです、ということなんでしょうけど、今度はそれとトランプはどう違うの? ……あ、移民制限だけでなく反TPPとかも含めて“保護主義”はイカンってことか。グローバリズム自体は肯定してて、ただ“自由放任”ではイカン、と。

A女史 トランプさんは“白人中間層の利益を守るんだ!”って感じで登場してきたけど、大統領になってから、実際は何をやってるんですかね?

藤村 まあ、約束は守らないでしょう(笑)。

外山 選挙に勝つために強調したスタンスにすぎないもんな。でもその人たちからの支持は今後も維持しなきゃいけないから……困ってるところ?(笑)

藤村 とにかく205ページで北田さんが云ってるとおり、リベラル派が云う「新自由主義」って、「自分の気に入らないことを言う人」に対して悪口として貼るレッテルでしかないわけだ。

松本k でもこの人たちは、要するに金融政策、財政出動で経済成長をってことでしょうけど、例えばIT産業にカネがたくさん流れるようにしたところで大して雇用を生み出す産業じゃないんだし、やっぱり大多数の人は低賃金の長時間労働から抜け出せませんよ。

画伯 いや、この人たちもべつに“バブルをもう1度!”みたいな話をしてるわけではないんだしさ。そんな“ものすごい成長”はもう無理なことは前提で、日本経済は下り坂だし、この人たちの言葉では「本来は『下りエスカレーターを上る』みたいなことが経済じゃないですか」(147ページ・北田)っていう、抑制の効いた形で財政出動でも何でもやって少しでも経済を上向かせましょうよ、ってことでしょう。私はそれにさらに少しは保護主義的な政策をプラスしたっていいじゃないかと思ってますが……。

外山 もちろん彼らも財政出動だけで全部解決するとか云ってませんよね。

藤村 というか、ここではあくまで“アベ政治を許さない!”的な人たちへの批判という流れで経済のことを云ってるだけで、そもそもそこまで突っ込んだ話をしてるわけではないんだ。“反安倍”の人たちは、“アベ政治”の中でかなり重要な位置を占めている安倍の経済政策に関してはよく見もしないで、トンチンカンな批判というか、単に“新自由主義”ってレッテルを貼ってすませてるだけじゃないかと批判してる。

外山 で、ちゃんと見れば安倍の経済政策は新自由主義ではないし、むしろ逆だ、と。

藤村 ただ、いわゆるアベノミクスの“第1の矢”、“第2の矢”とか云って金融緩和とか財政出動をやってるところまではたしかに反緊縮なんだけど、同時に労働規制を緩和してたりもして、そこらへんは新自由主義的でもあるでしょ。もちろん143ページで彼らも云ってるように、安倍内閣になって以降、最低賃金が相当上がってることも間違いない。福岡だって今やもう700円台後半(789円)だし、東京なんか1000円に近い(958円)。

外山 平均ではもう1000円を超えてるって書いてあったね。

藤村 失業率も下がってて、2016年はたしか3.1%でしょ。

外山 詳しいですね。さすが予備校で倫理政経を教えてるだけのことはある(笑)。

藤村 3.1%と云えばもう“完全雇用”に近いレベルですよ。非正規雇用の割合も、上がっちゃいるけど増え方は意外と鈍ってきてて、今は38%台だったと思う(藤村註.2015年12月に厚生労働省が発表した就業形態調査によると非正規社員の占める割合は40.5%で、初めて4割を超えた)。それだって、彼らも指摘してたように(164ページ・北田)、定年退職後の高齢者も働きやすくした結果、もちろんそれらも非正規雇用なんで数字に反映されてるからでもあるしさ。……ともかく安倍政権の経済政策というのは、新自由主義的な側面も持ちつつ、全体としては反緊縮だし、実際その結果として経済は上向きになってる。その経済成長が“本物”であるかどうかはともかく、単に数字を見ればそうなってて、しかし“アベを倒せ!”の人たちはそういう数字を見ることさえしてないんじゃないかという批判は、ごもっともです。

外山 感情論でしかないような、「安倍は悪、したがって安倍のやることは全て間違っている、よってアベノミクスひいてはリフレ政策は間違っている」というヘンテコな「三段論法」が蔓延してる、と(144ページ・栗原)。

藤村 かつ、日本だけでなくアメリカでも同じような現象が起きてて、向こうの“反トランプ”の人たちも日本のリベラル派と同じようなことになってるんじゃないかと彼らは見てる。ところがなぜか、じゃあ彼らは安倍ちゃんに対するのと同様、トランプも部分的には評価するのかと思いきや……(笑)。

外山 うん、そこが解せないんだよなあ。

藤村 そこらへんがやっぱりこの人たちの限界で、“文化左翼”を批判しながら自分たちもその圏域から大して逃れられてない。

外山 彼らがトランプに腹を立ててる一番の原因は、やっぱり移民制限とかだよね。それじゃあ反グローバリズムを声高に叫びながら移民制限にだけは反対する左派の二枚舌と大差ないというか、安倍ちゃんはケシカランからアベノミクスも全部ケシカランというのと似たようなもんで、移民政策や経済政策がケシカランからトランプのやることは全部ケシカランみたいになってない?

藤村 それまでの流れからすれば、アメリカの白人中間層がトランプを支持するのはもっともだ、しかしトランプの移民制限政策は結果的にはむしろ白人中間層の経済的利益も損なってしまうのではないか、という云い方になるのが自然でしょう。しかしここでは、ほとんど何の留保もないトランプ批判になってる印象を受ける。

外山 “トランプ政治を許さない!”のノリになっちゃってるよね(笑)。

藤村 アベ政治はちょっとは許すがトランプ政治は絶対許さない!(笑)

外山 ぼくらはかなり保護主義派だし、あと反ポリコレ派でもあるから、トランプにも評価すべきところはあるというか、少なくともヒラリーよりはるかにマシってところまで、まあ我々団のファシスト3名(外山と山本桜子だけでなく、発言がないだけで東野大地も読書会に参加)と藤村君や画伯あたりまでは共通認識があると思うけど、経済政策には賛同できんし、とくに反ポリコレ派でもないだろう北田座談会の3人は、差別発言は連発するわフェイク・ニュースは流しまくるわ、たしかに“トランプなんかイイとこナシだ!”ってことにそりゃなるか(笑)。でもせめて「トランプ的なものに引き寄せられる人たち」にはもう少し寄り添うようなスタンスを模索してほしいよなあ。あるいは「アパホテル的なものに惹かれていく普通の人」たちにも少しは届くようなレトリックを。

藤村 ……ただ彼らのアベノミクス評価も、それこそ“逆張り”になってしまっているというか、評価するにしてもちょっと高く評価しすぎなんじゃないかと思うよ。オレもそんなに経済には強くないけど、アベノミクスが始まった頃に云われてたのは、要は“期待に賭ける経済”みたいなことだったでしょ。“今までとは変わるんだ!”って、お札をジャンジャン刷って金融緩和をやって、財政出動もどんどんやって契機を上向きにするんだっていう、そういう方針をまずバーンとブチ上げたから円安になって株価も上がっていくことになった。で、安倍ちゃんはその後もずっとその方向性を強気で貫いてるよね。経済だけでなく政治に関してもそうだけど、“反省”とかまったく素振りも見せずに、とにかく“強気であること”自体を強気で貫いてる。だから経済が上向きであり続けてるという側面はあると思う。
でも実はそれは“安倍ちゃんの強気”に支えられた成長であるにすぎない可能性があって(笑)、限りなく錯覚みたいなものかもしれないわけです。経済なんて人々のそういう“気分”で結構動いたりするから、錯覚であっても実際に数字が良くなったりする。数字が良くなると、やっぱり景気がいいぞってことで、設備投資をしたり人を雇ったりする。失業率も下がるわけだけど、実体に支えられたものではなく、人々の“期待に働きかけた”結果としての好景気である側面が濃厚なんで、しっぺ返しがいずれ来るんじゃないだろうかとオレなんかは思ってるわけですよ。だから安倍ちゃんの経済政策もそんなに過大評価しないほうがいいんじゃないか、と。バカなリベサヨへの批判としては、現時点では充分納得できる議論だけどさ。

外山 何度も云うように、ぼくは今日の参加者の中でもたぶん一番、経済はからっきしダメなんで、とくにこの第3章に関しては“へー、そうなのかー”と一方的にお説拝聴する感じになっちゃうし、それはスガさんに“もう資本主義なんか終わっちゃうんだから!”という話を聞く時もそうですけど(笑)、あるいはさっきからの藤村君の話とかも、とにかくコト経済の話に関してはいろんな立場の意見をぼくはただ無批判にとりあえず受け入れるしかない。

しかしこの北田座談会も含めて、大半というかほぼすべての議論は、基本的にはアメリカあるいは欧米と歩調を合わせるという現在の日本の国際的な位置を、せいぜい微修正する範囲でのものでしかないでしょ。ぼくはそもそも“中華主義ファシスト”で、アメリカの属国であることをやめて中国の属国になりましょうって立場なんで、まあいろんな話は聞くだけ聞いとくけど、“仮に中国の属国って路線で行くとして”という前提での経済論はたぶん今のところ皆無だろうから、究極的にはいつもあんまり参考にならないんだよなあ(笑)。……まあそんなわけで、最後のほうはだいぶグダグダになっちゃいましたが、そろそろ19時になるし、今日はこのぐらいで。

終わり

 

 

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