私の“都知事選2016”が、こうして始まった


 

 

唐突かつ無意味すぎる都知事選実施に、さすがの私といえども何も“新しいこと”は思いつけず、昨年福岡と大阪でやった“ニセ選挙運動”を半ば以上はヤッツケ的に、7月14日の告示以来ケナゲに続けている。

この原稿を書いているのは7月17日深夜。私の“選挙戦”もすでに丸4日間を経た。

そもそも今回、とくに何もやる気はなかったのである。まったく別の用事で6月中旬以来たまたま上京しており、上京後まもなく始まった参院選も今回は華麗にスルーして、7月半ばには、つまり本来なら今頃ちょうど本拠地・福岡に帰還しているはずだった。“近々また都知事選”の噂は耳にしていたが、まさか私がまだ東京に滞在しているうちに始まろうとは思ってもみなかった。参院選ならともかく都知事選となれば、しかもちょうど東京滞在中に始まってしまうとなれば、私はやはり何もしないわけにはいかない立場にある。何かやれと誰に頼まれたわけでもないが、名もなき善良な人民の声なき声が私には聞こえる。

「えーい、やるか」と意を決して、もちろん福岡を発った時点では何の準備もしてなかったわけだから、急遽“ニセ選挙運動”用の街宣車看板をやはりたまたま東京滞在中だった「九州ファシスト党〈我々団〉」の同志・山本桜子と2人、手作りで製作したのが告示の前日である。

で、告示日。何やかんやで“選挙経験”は豊富な私、この日はモノホンの候補者どもは朝8時に都庁に集合し、立候補手続きの他、それ以前にまず立候補受付の順番を決めるクジ引き、さらに選挙掲示板のどの番号の区画にポスターを貼るかを決めるクジ引き、それどころかそのクジ引きをする順番を決めるためのクジ引き……という“選挙の公平性を保つため”のバカバカしいことこの下ないクジ引き三昧に時間を浪費させられていることを知っている。ライバル陣営(?)たちが本格的に動き始めるのは午前9時とかだろう。ニセ候補者の私が動き始めるのもそれくらいの時間でよい。同志桜子、そして事前に“出馬”を打ち明けたら「毎日撮影して動画レポートをネットに上げます!」とやたら張り切っている知人のO氏と、「JR高円寺駅・午前8時半」に待ち合わせた。

……のだが、実は午前8時になるや必要な“仕掛け”がある。ネットカフェに入って(今なおガラケー使用のIT弱者なのだ私は)ツイッターで「外山恒一は出ないのか?」的に都知事選のたびに激増する“外山待望”ツイートを検索して拾い、10か20かリツイートした上で、「お待たせしました、外山恒一、満を持して(ニセ)立候補!」とやらなきゃいけない。ところがこれに意外と時間を食って、私は待ち合わせに大幅に遅刻、同志桜子とO氏を1時間近く待たせてしまった。

まあ必要な作業を済ませるためだから遅刻は仕方がない。予定より少し遅れたが、いよいよ始めようではないか。

街宣車の看板を“通常仕様”(「日本政府はテロに屈しろ」とか「既成政党全部打倒」とか「戦争やるならアメリカとやれ」とか)から“ニセ選挙運動”用のそれへと付け替えるところから撮りたい、というO氏の要望もあり、では早速、とやはり今回このために急遽購入した新品のインパクト(電動ドライバー)を手に取るも……あれ? 動かん。どうやら街宣車のシガーソケット電源からでは電力が弱すぎるらしい。

困った。フツーのドライバーで手動でチマチマやってもいいのだが、ものすごくメンドくさい。延長コードはあるので、誰か都内の友人宅へ移動して「電源貸して」と頼むほうが断然ラクである。しかしそれだけのためにあんまり遠くまで行くのも何だかなあ、の感が否めない。ふと、かれこれもう20年来の友人で、現在は高円寺に拠点を構え、今や私と双璧をなす本邦“面白政治運動”の巨匠・松本哉君のことを思い出す。彼が経営する「素人の乱5号店」が正午に開くはずだから、それを待てばいい。

そんなわけで初っ端からモタモタしまくりつつ、正午すぎ、松本君に連絡して電源を借り、無事に看板を付け替えた。

付け替えながら、雑談。“体質はラジカルだが思想はリベラル”な松本君は、「めざせ投票率ゼロ%」の看板にビミョーな反応である。「選挙とかホント、どーでもいいんだけどさ、今回ばかりはウチらが勝てる可能性も出てきたじゃん」。松本君の云う“ウチら”とはリベラル陣営、つまり“野党統一候補”的な都知事候補である鳥越俊太郎氏のことである。体質も思想もラジカルである私は意に介さない。「万が一“5票差”とかで負けたりしたら、明らかに“外山恒一のせい”ってことになっちゃうよね。ざまーみろだ!」

釈然としない表情の松本君を「気が向いたら街宣車に乗ってよ。『松本哉に1票を!』ってアナウンスでも全然いいよ」と誘惑することも忘れず、「ともかく電源ありがとう」といざ出発、午後1時近くからの遅めの“選挙戦初日”のスタートとなった。

まずは高円寺駅前に出て、セックス・ピストルズ「アナーキー・イン・ザ・UK」をBGMにマイクを握る。最初ちょっとギコチなかったが、昨年2回もやった手法のルーティンな焼き直しだし、ものの数分でスラスラと言葉が出るようになる。「選挙反対! めざせ投票率ゼロ%!! 外山、外山恒一が投票ボイコットのお願いにやって参りました。皆さんが投票に行くから誰かが当選してしまうんです。誰も投票に行かなければ、全員ゼロ票、誰も当選できません。投票には絶対に行かないよう、お願い申し上げます。1人でも投票に行かれますと、誰かが当選してしまいます。やめてください。みんなが迷惑いたします。投票率ゼロ、選挙完全ボイコットを実現し、全員ゼロ票で、東京から都知事を叩き出しましょう。選挙に出るような非常識な人に政治が任せられるでしょうか? 選挙反対、めざせ投票率ゼロ%。外山、外山恒一が投票ボイコットのお願いに参りました。それでもどうしても投票に行くという方、いらっしゃいましたら仕方がありません、外山、外山恒一と自信を持ってお書きください。投票に行かないのと大体同じような結果をお約束いたします。元・東京都知事候補、9年前の東京都知事候補、外山恒一でございます。東京に知事はもう要りません。投票率ゼロで全員ゼロ票、当選者ゼロで、都知事のいない明るい東京を築いて参りましょう」

私の“都知事選2016”が、こうして始まった。